キャリアステップCareer Step

キャリアステップ

総合内科専門医・指導医
内分泌代謝科専門医
糖尿病専門医
川名 秀俊先生
医師(平成15年卒)

先生の簡単な経歴とご専門や研究領域などについて教えてください

わたしは東邦大学を卒業後、東邦大学医学部付属佐倉病院(現 東邦大学医療センター佐倉病院)で研修を開始しました。スーパーローテート研修が義務化される直前の年度の入職でしたので、初期研修1年目から内科学講座に入局する研修方式でした。『せっかく医師になったのだから、患者さんの病状を総合的に診ることができるようになりたい』という想いが内科を選択した理由です。
その後、糖尿病や内分泌学を専門とするグループに所属したのですが、この医局の方針として一般的には『専門外』とされるような症例も広く診ることができるような人材育成に力をいれていたということもあり、急性期から慢性期まで幅広い病態を全人的に診療しようと考える基盤を得ることが出来ました。

千葉市立海浜病院に入職した経緯を教えてください

ちょうど40歳になるターニングポイントを機に、大学医局をいったん離れて地域中核病院で働くことを決意しました。入職先としてわたし自身の出身地である千葉市での活躍の場を求め、この千葉市立海浜病院を紹介して頂きました。海浜病院はこれまで以上に多彩な疾患を総合的に診ることができるのが魅力です。

実際に働きはじめてからの印象を教えてください

海浜病院の内科部門は大きく消化器内科、循環器内科、そして(総合)内科に分かれてはいますが、医局の規模も適度なので臓器別に縦割りになることもなく、お互いに相談し易い環境が出来上がっています。
また、公立病院ならではだと思いますが、基本的に外勤が無いため、毎朝所属する内科医がほとんど全員カンファレンスに集まります。そこで入院症例の病状確認や新規入院患者の割り振りなどが行われますが、このような場があるおかげで担当以外の患者さんの方針も確認がしやすいですね。病院全体でも月1回の朝礼があり、病院運営側と医療現場側の風通しに非常に役立っていると感じています。

キャリアアップについて具体的にお聞かせください

われわれ医師が『キャリアアップ』を考える場合、最も端的なものが『専門医資格の取得』になると思います。専門医資格を有していることが必ずしもその医師の技量を示さない場合もありますし、医師の中でも専門医不要論を主張される方もいらっしゃいます。しかし自らの専門性や保有する知識・技術を対外的にわかりやすく伝えることができるのも専門医資格だと思うのです。単なる専門医バッジ集めになることは避けなければいけませんが、専門医試験を受験し合格することは体系化された知識の取得とその証明において非常に有用です。
わたし自身は総合内科専門医の他に複数の認定医・専門医資格を有していますが、内科系generality的な視点と とsubspecialty的な視点を併せ持つことで、患者さんによりよい医療を提供することが出来ると考えています。また、本来の専門分野に関連度の高い他領域の知識(わたしの場合は、糖尿病の専門から、さらに臨床栄養学やスポーツ医学などへ)を広げていくことは、それぞれの領域の知識をさらに高め合うだけでなく、自らをブラッシュアップしていく上でモチベーション維持にも役立っています。

若手医師へのメッセージをお願いします

現在は新しい専門医制度にむけた変革の時期であり、特に若い先生方には様々な不安があるのではないかと思います。そんな時はいちど視点を変え、自分のためにではなく、目の前の患者さんのために、地域のために、自分に求められているスキルが何かを考えてみてください。これに沿って行動していくことが、理想的なキャリア形成につながるはずです。われわれは、みなさんの選択を尊重し、よりよい研修が出来るようにサポートさせて頂いています。海浜病院は指導医との距離感も近いので、仕事に限らずなんでも相談して欲しいと思います。
また、中堅医師の方に対しても、わたしのような40代からのセカンドキャリアの選択として海浜病院は職場環境も恵まれており、お勧めできます。この地域のために、海浜病院で一緒に働きませんか。

初期研修

初期研修医
大澤 悠先生
2016〜17年度

海浜病院は研修病院としては小規模ですが、その分だけ診療科間の垣根が低くて仕事がしやすいです。経験すべき手技や患者さんのケアが求められたとき、他科を研修中であっても積極的に指導してくださるような気風があります。
また海浜病院の初期研修プログラムは、自由度が高いことも利点です。私は学生時代に将来の志望科が確定していなかったので、研修開始後のローテート変更希望を柔軟に対応して頂き大変助かりました。
研修中に印象的だったのは、ある患者さんへ末期がんの告知を行った際のことです。当初、ご家族のなかにどうしても告知したくないというお考えの方がいらっしゃいました。そこで私は多忙な指導医の先生に代わり、その心情を少しでも汲み取りたいと思い何度か話し合いの場を設けました。最終的にご家族の総意をまとめられたのですが、その際にご家族から「同じ病気になったら先生に診てもらいたい」とお声をかけて頂き、とても嬉しかったのを覚えています。初期研修医という立場ではありますが、やりがいや責任感を強く感じた瞬間でした。
今後、医師として診療を行うなかで、さまざまな社会的背景を抱えた患者さんに出会うことでしょう。海浜病院には親身で熱心な指導医、研修医の体調を気遣って下さる看護師、研修医に検査のコツやノウハウを伝授して下さる各部門のスタッフがおり、患者さんに応じた医療を学び、実践することができる環境です。研修先をご検討の皆様は是非、当院へ見学にいらしてください。
私は初期研修の後、耳鼻咽喉科を専攻します。海浜病院の諸先生方のように、親身になって患者さんの診療を行うだけでなく、周囲によい影響を与えられるような医師を目指し、今後も日々努力していく所存です。

小児科後期研修

小児科専門医
鋪野 歩先生
医師 7年目

初期研修で小児科領域に興味をもった私は、後期研修先としてさまざまな患者さんをケアできる病院を考えていました。海浜病院を選んだ大きな理由は、病院見学の際に感じた先生たちの雰囲気のよさです。実際に研修を受けてみて、海浜病院はきめ細かい指導を受けられる、大変恵まれた環境であることを実感しています。
たとえば、小児科の専門医取得に必須である論文の執筆は、周りの先生方のサポートによって、研修開始後からすぐにスタートすることができました。また、頻度の少ない疾患の指導にも声をかけていただき、効率よく学ぶことができました。研修中、特に印象に残っているのは、気管挿管の手技を上級医や指導医の先生にアドバイスをいただきながら、経験を積むことができ、上達すると私以上に周りの先生方が喜んでくださったことです。気管挿管以外にもエコーや点滴ラインの確保まで一つひとつの手技しっかりとしたフィードバックがいただける環境です。
研修医同士で切磋琢磨できる環境も魅力的です。私には同期がいなかったのですが、徐々に後期研修医が増え、学年の垣根を超えて積極的にコミュニケーションをとるようになりました。研修医同士が互いに意見を交換するのはモチベーションを上げるよい機会になると実感しています。
海浜病院は、女性医師が働きやすい環境も整っていますし、上級医や指導医の先生はやりたいことに対して背中を押してくださる方ばかりです。
今後は海浜病院での経験を生かし、専門医を取得して臨床の経験を積んでいきたいです。

女性医師のキャリア

産婦人科専門医・指導医
木下 亜希先生
医師 15年目

地元の千葉県で働きたいと考えていた私は、大学卒業後、成田赤十字病院で初期研修を受けました。その際、指導してくださった先生方の影響や姉が産婦人科医であったこともあり、私は引き続き成田赤十字病院で産婦人科後期研修を受けました。その後、海浜病院で2年、千葉医療センターで5年間の勤務を経て、2016年に海浜病院に戻ってきました。
産婦人科は、急なお産や緊急手術があり、結婚や出産を考えている女性医師にとってはハードルが高いと感じられるかもしれません。
しかし、海浜病院は子どもをもつ医師をサポートする体制が整っており、現在、私は仕事も、家族と一緒に過ごす時間も大切にし、充実した日々を送ることができています。
特に感謝しているのは、一週間に計最大10時間まで、小学校4年生未満の子どもをもつ医師が部分的に休みを取得できる「部分休業」の制度です。この部分休業を利用した1時間の早退により、子どもの習い事のお迎えや夕飯の支度ができることは、仕事を継続するうえで大きな意味をもつと考えています。
また、海浜病院の産科・婦人科には子育てをする女性医師が多いため、お互いの置かれた立場を理解し合い、助け合って勤務しています。
もちろん当直の場合など、快くサポートしてくれる家族はとても心強い存在です。
現在、私は周産期専門医取得を目指しています。これからも子育てを含む家庭人としての自分の人生を大切にしながら、キャリアも積み上げられる努力をして行きたいと思っています。

海外留学経験を生かしたキャリア

心臓血管外科専門医・指導医、外科専門医、循環器専門医、医学博士、薬剤師、小児用補助人工心臓実施医
杉本 晃一先生
医師(平成13年卒)

先生の簡単な経歴とご専門や研究領域

私は2001年に千葉大医学部卒業後、東京女子医科大学の心臓血管外科に入局しました。東京女子医科大学は日本で最も早くから小児の心臓外科を始めた施設のひとつであり、歴史もあり症例も多かったからです。
心臓血管外科医を目指したきっかけは、医学部生時代に見学した心臓の手術にあります。心臓手術が終わった後、患者さんが劇的に良くなって退院していく姿を見て、心臓外科手術は、患者さんの人生そのものに関わるものであることを実感しました。直接自分の手で患者さんの命に携わる仕事、さらには、これからの未来を担うこども達の命を救う仕事に関わりたいと思いました。

海外留学のきっかけ

心臓血管外科医として忙しい毎日を送っている中で、今後をどう過ごせば一人前の心臓外科医になれるのかと常に考えていました。もともと医師になりたての頃から年に1度は海外の施設に見学に行っていました。欧州や北米の病院では、外科医が多くの症例を執刀し、良い成績を残している。自分と同年代の若手の外科医は技術も知識も行動もより成熟していました。さらには家族と過ごすプライベートの時間もきちんと持っている。海外の外科医の環境と、現在の自分が置かれている環境との違いは何なのか、それを知りたいと思いました。

海外での経験

自身の海外留学では、2人の「クリスチャン」に影響を受けました。
一人目の「クリスチャン」は、ドイツ人の心臓外科医、クリスチャン・シュライバーです。私は2010年、千葉県の海外研修支援プログラムを活用し、ドイツ・ミュンヘンのDeutsches Herzzentrum München (ミュンヘン心臓病センター)で研修をする機会を得ました。クリスチャン・シュライバーは小児心臓外科 部長を務めており、世界的にも有名な外科医でした。彼は、世界最速の小児心臓外科医とも呼ばれ、小児先天性疾患のなかでも難しいといわれる「ノーウッド手術」でも昼過ぎには手術を終えていました。ミュンヘン心臓病センターでは先天性心疾患の手術を1日2例、年間約500例行っていました。その手術数の多さと質の高さに感心しましたが、心臓外科医は皆、午後5時には仕事を切り上げ、家族との時間を過ごしている、その事実を見てさらに驚きました。それが当たり前に行われている環境がどれほど素晴らしいかを身を持って感じました。私自身、海外でのトレーニングの必要性を強く意識したのです。ある日、クリスチャン・シュライバーが私に履歴書を持ってくるよう言いました。その翌朝、「あの履歴書、送っておいたから」と言われました。彼はオーストラリア・メルボルンの病院にいる、もう一人の「クリスチャン」、Dr.クリスチャン・ブリザードに連絡を取ってくれていたのです。
The Royal Children’s Hospitalは、オーストラリア・メルボルンにある南半球で最大のこども病院です。Drクリスチャン・シュライバーが繋いでくれた縁によって、この病院で働く機会を得ることができました。
部長のDrクリスチャン・ブリザードは、フランス人で、家族がフランスに住んでいます。国際学会の前後にはフランスに寄るため、長期間病院を不在することがありました。しかし、彼が不在の間でも日々の手術、診療は問題なく稼働し、手術成績にも影響が出ない。きちんと病院が機能するシステムが作られているのです。それだけではなく、毎月のようにトップジャーナルに医学論文が出て、大学院生や若手心臓外科医の教育機関としても優れている。能力の高い医師が集まり、患者さんも集まってくる。病院で働く人達もワーク・ライフバランスを無理なく実現している。また、こども達が安心して訪れることができるよう、遊園地や動物園、水族館、カフェもあり、明るい雰囲気のみんなが楽しめる病院でした。まさに理想とする病院に出会いました。私も、忙しいながらも家族と過ごす時間も増え、メルボルンの3年間はとても充実したものでした。

千葉市立海浜病院に入職した経緯

海外での経験や私が受けた教育を日本の医療に還元したいと考えていました。今回、千葉市立海浜病院で先天性心疾患の心臓血管外科を始めるというお話しを聞き、ぜひ千葉の医療に貢献したいと思い、入職を決めました。

これから取り組んでみたい仕事や研究

日本では、小児の心臓外科を実施する施設は多いと言われています。そのため、一つの病院で若手の外科医が経験できる手術数が減り、その結果、修練と技術の習得に時間を要してしまう側面もあります。
まずは、千葉市立海浜病院の心臓血管外科を安全に立ち上げるとともに、オーストラリア・カナダで触れた理想的な小児医療のシステムに少しずつ近づければと思います。それが長期的には地域に求められる小児医療を形作ってゆくものと期待しています。

実際に働きはじめてからの印象

若い先生も多く活気があり、医師同士や看護師、コメディカルとの距離が近いことが特徴です。これから心臓血管外科を立ち上げるタイミング、新病院へと病院が生まれ変わるタイミングですが、それに対して前向きなスタッフも多いと感じています。
また、公立病院の重要なミッションとして、「患者さんの診療」があります。今いる患者さんを治すこと(診療)と、将来の患者さんのために、今の医療の問題点を明らかにして解決していくこと(臨床研究)も重要です。どちらにも貢献することが医師の役割と考えています。心臓外科にも興味を持ち、仲間になってくれる医師が増えれば嬉しいです。

若手医師へのメッセージ

ぜひ海外に行って、他国の同年代の医師たちと触れ合って欲しいと思います。海外で私が出会った医師達は一言で表すと、「independent(自立・独立している)」。プロフェッショナルになるために自分に何が不足しているのか、そして何を今すべきなのか、それを意識する医師になってもらいたいです。